予防矯正のための口腔筋機能療法:
子どもの歯並びを守るためのアプローチ
子どもの歯並びや咬み合わせの問題に対する関心が高まる中、
「予防矯正」という概念が注目されています。
予防矯正は、将来の歯列不正や不正咬合を防ぐために、
早期に介入し、子どもの成長に合わせた治療を行うアプローチです。
その中でも特に重要視されているのが、
「口腔筋機能療法(MFT:Myofunctional Therapy)」です。
この治療法は、歯並びや咬み合わせの問題だけでなく、
口周りの筋肉の発達にも焦点を当て、根本的な原因を解決するためのアプローチです。
この記事では、「予防矯正®のための口腔筋機能療法」について詳しく解説し、
その効果やメリット、そして具体的な治療内容に触れながら、
親御さんが知っておくべきポイントを説明します。
予防矯正とは?
予防矯正とは、子どもの成長過程において、
将来的な歯列不正や不正咬合を未然に防ぐことを目的とした矯正治療の一つです。
通常の矯正治療が、歯がすでに生え揃ってから問題を修正するのに対し、
予防矯正は、子どもの顎の成長や永久歯が生え始める時期に早期介入することで、
軽度な治療で済ませることができるのが特徴です。
予防矯正®は、特に歯列不正の進行を防ぐため、
早期に対処することが重要視されています。
この治療を行うことで、将来的に大掛かりな矯正治療を避け、
自然な歯並びの発達を促進することができます。
口腔筋機能療法(MFT)とは?
「口腔筋機能療法(MFT)」は、口周りの筋肉機能を正常化することを目的とした治療法です。
口腔筋は、日常の呼吸や飲み込み、話す動作、
また食事などで大きな役割を果たしますが、これらの機能が正しく働かない場合、
歯並びや咬み合わせに悪影響を与えることがあります。
MFTは、これらの筋肉のバランスを整え、
正しい機能を回復させるための訓練や治療を行うことで、歯列や顎の発達をサポートします。
口腔筋機能の問題が歯列不正に与える影響
子どもの歯並びや咬み合わせが悪くなる原因の一つとして、
口腔筋の不均衡があります。
例えば、以下のような口腔筋機能の問題が歯列不正に繋がることがあります。
- 口呼吸:正常な鼻呼吸ではなく、口で呼吸する癖があると、舌の位置が下がり、顎の成長が正常に行われず、上顎の狭窄や開咬などの問題が生じることがあります。
- 異常な舌の動き:舌を前方に押し出す癖がある場合、歯の位置に影響を与え、歯が前方に出てしまうことがあります。また、舌が正しい位置にないことで、咬み合わせの不調和を引き起こすこともあります。
- 飲み込みの癖:不正な飲み込みの癖は、前歯に圧力をかけ、歯列不正や開咬を引き起こす原因となります。
予防矯正と口腔筋機能療法の連携
予防矯正と口腔筋機能療法(MFT)は、相互に補完し合う関係にあります。
子どもの歯並びや咬み合わせの問題が筋機能の不均衡から生じている場合、
単に歯を動かす矯正治療だけでは問題が再発する可能性があります。
MFTを併用することで、歯並びを整えると同時に、
口周りの筋肉のバランスも整え、持続的な改善が期待できるのです。
MFTの効果
-
正しい舌の位置を学習 口腔筋機能療法では、舌が正しい位置にあることを学びます。舌が上顎に正しく位置していることは、顎の正常な発育に大きく影響します。正しい舌の位置は、歯列が自然に広がるためのスペースを確保し、歯並びがきれいに揃うのをサポートします。
-
呼吸の改善 MFTは、口呼吸から鼻呼吸への改善を目指します。鼻呼吸は口腔内の乾燥を防ぎ、細菌の繁殖を抑えるだけでなく、歯列の安定にも寄与します。正しい呼吸法を学ぶことで、顎の成長が正常に進み、歯並びも整いやすくなります。
-
噛む力や咬み合わせの改善 正しい咬み合わせには、噛む力や口腔内の筋肉バランスが非常に重要です。MFTによってこれらの機能が整うことで、自然な咬み合わせを形成しやすくなり、将来的に不正咬合を防ぐことができます。
予防矯正のための口腔筋機能療法の具体的なアプローチ
口腔筋機能療法は、主に以下のようなアプローチで進められます。
1. 舌のトレーニング
舌を正しい位置に置くための訓練が行われます。
例えば、舌が上顎に常に軽く接触している状態を意識させ、
日常生活の中でこの状態を保つように指導します。
この訓練によって、舌の不正な動きが修正され、
歯列や咬み合わせに良い影響を与えることが期待されます。
2. 呼吸法の改善
MFTでは、口呼吸の改善も重要な要素です。
鼻呼吸を意識させるためのトレーニングを行い、
日常生活でも鼻で呼吸する習慣を身につけることが目指されます。
呼吸法の改善は、睡眠時無呼吸症候群の予防や全身の健康にも寄与します。
3. 筋力バランスの調整
口腔内外の筋肉のバランスを整えるため、
噛む力や口を閉じる筋肉(口輪筋)の強化トレーニングが行われます。
これにより、口腔周囲の筋肉が適切に機能し、歯列や咬み合わせの改善に繋がります。
4. 飲み込み方の改善
不正な飲み込み方を修正するための訓練も行います。
舌を前に押し出す癖がある場合、この癖を取り除き、
正しい飲み込み方を身につけることで、前歯への圧力を軽減し、歯列不正を防ぐことができます。
予防矯正のための口腔筋機能療法にかかる費用
気になる費用ですが、口腔筋機能療法の費用は、歯科医院や治療内容によって異なります。
通常の矯正治療と組み合わせて行われる場合が多く、
その場合、矯正治療全体の費用に含まれることが一般的です。
ただし、独立してMFTを受ける場合は、月々のセッションごとに費用が発生します
総額で見た場合、治療期間やセッションの回数に応じて
数万円から数十万円の範囲内で収まることが多いです。
まとめ
「予防矯正のための口腔筋機能療法」は、
子どもの歯並びや咬み合わせの問題を根本的に解決するための重要な治療法です。
歯列不正の進行を未然に防ぐだけでなく、正しい舌の位置や呼吸法、
筋肉の機能を改善することで、将来的に健康な歯列と美しい笑顔を維持することが期待できます。
もし、お子様の歯並びや口呼吸、飲み込み方に不安がある場合は、
ぜひ歯科医院で予防矯正と口腔筋機能療法について相談してみてください。
早期の介入が、将来の歯科治療の負担を軽減し、健康な成長をサポートする第一歩となるでしょう。
医療法人社団AADC
あざみ野青葉デンタルクリニック
歯科医師
理事長 鈴木 拓也
院長の経歴はこちら