歯科用レントゲンは、歯科治療において非常に重要な役割を果たしています。
歯や顎の内部構造を視覚化することで、通常の目視検査では見逃されがちな問題を特定し、
適切な治療計画を立てる助けとなります。
しかし、レントゲン撮影には放射線が使用されるため、
安全性に対する懸念や、長期的な影響についての疑問がしばしば提起されます。
こちらでは、歯科用レントゲンの安全性とそのデメリット、
放射線量について詳しく解説します。
☆歯科用レントゲンの種類と目的
歯科用レントゲンにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる目的で使用されます。
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デンタルレントゲン(歯内レントゲン):
- 口腔内の特定の歯やその周辺組織を詳細に見るために使用されます。
- 虫歯の診断や、歯根の感染症、骨の損傷の確認などが主な目的です。
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パノラマレントゲン:
- 上顎と下顎全体を一度に撮影するためのレントゲンです。
- 親知らずの位置確認や、顎関節症、骨の異常の診断に使用されます。
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セファロメトリックレントゲン:
- 主に矯正治療の計画に使用される頭部の側面からのレントゲンです。歯並びや顎の形状を確認するために使用されます。
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コーンビームCT(CBCT):
- 高解像度の3D画像を提供するためのレントゲンです。
- インプラントの計画や複雑な歯科手術の際に必要とされます。
☆歯科用レントゲンの放射線量
歯科用レントゲンに使用される放射線量は非常に低く、
一般的には健康への影響はほとんどないとされています。
具体的な放射線量については以下のようになります。
- デンタルレントゲン: 1枚あたり約0.005ミリシーベルト(mSv)
- パノラマレントゲン: 約0.01〜0.02ミリシーベルト
- コーンビームCT(CBCT): 撮影部位や設定によりますが、0.1〜0.2ミリシーベルト程度
これを日常生活における放射線被ばくと比較すると、
例えば自然環境から受ける年間の放射線量は約2.4ミリシーベルトであるため、
歯科用レントゲンから受ける放射線量は非常に低いことがわかります。
☆歯科用レントゲンの安全性
歯科用レントゲンは、通常の使用範囲内では非常に安全とされています。以下にその理由を挙げます。
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低放射線量:
- 前述の通り、歯科用レントゲンから受ける放射線量は非常に低いため、人体への影響は最小限です。さらに、デジタル技術の進化により、従来のフィルムベースのレントゲンに比べて放射線量はさらに低減されています。
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局所的な被ばく:
- 歯科用レントゲンは口腔内や顎の一部に焦点を当てた撮影であるため、全身に放射線が広がることはありません。
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防護措置:
- レントゲン撮影時には、患者が鉛のエプロンや甲状腺保護用のカラーを装着することで、被ばくをさらに減少させています。
☆歯科用レントゲンのデメリット
しかし、歯科用レントゲンにもいくつかのデメリットや注意点があります。
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妊娠中の被ばく:
- 妊娠中の女性がレントゲンを受ける際には特に注意が必要です。歯科用レントゲンの放射線量は非常に低いため、胎児への影響はほとんどないとされていますが、念のため妊娠中のレントゲン撮影は避けるか、必要最小限に留めるべきです。
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放射線感受性の個人差:
- 放射線に対する感受性は個人差があり、特に小児や放射線に対して敏感な体質の人は注意が必要です。このため、必要な場合にのみレントゲンを撮影し、頻度を最小限に抑えるよう努めることが重要です。
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コスト:
- 高度なレントゲン技術(例えばCBCT)は費用が高くなることがあります。保険適用外の場合、患者の方にとって経済的負担が大きくなる可能性があります。
☆歯科用レントゲンのメリット
デメリットがある一方で、歯科用レントゲンは数多くのメリットを提供します。
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早期発見と予防:
- レントゲンは虫歯や歯周病、骨の異常などの早期発見に役立ちます。目に見えない問題を早期に見つけることで、治療を迅速に行い、症状の進行を防ぐことができます。
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正確な診断と治療計画:
- レントゲン画像は、歯科医師がより正確な診断を下し、効果的な治療計画を立てるための重要な情報源です。特に複雑な治療が必要な場合、レントゲンは不可欠です。
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手術前の計画:
- インプラントや親知らずの抜歯などの手術前には、レントゲンで歯や顎の状態を詳細に把握することで、手術のリスクを減らし、成功率を高めることができます。
☆歯科用レントゲンを安全に使用するためのガイドライン
安全に歯科用レントゲンを利用するためには、いくつかのガイドラインに従うことが推奨されます。
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必要性の評価:
- レントゲン撮影が本当に必要かどうかを慎重に評価することが重要です。歯科医師は患者の症状や既往歴を考慮し、必要最低限の撮影を行います。
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放射線防護の徹底:
- 鉛製の防護具を適切に使用し、特に甲状腺や生殖器などの放射線に敏感な部位を保護します。
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最新技術の活用:
- デジタルレントゲンのような最新技術を使用することで、放射線量をさらに低減させることが可能です。また、画像の品質が向上するため、より正確な診断が可能になります。
☆まとめ
歯科用レントゲンは、歯科治療において欠かせないツールであり、
そのメリットは非常に大きいです。
放射線被ばくのリスクは極めて低く、安全性が確保されていますが、
特に妊娠中の女性や放射線感受性の高い患者の方に対しては、注意が必要です。
歯科医師と患者の皆様が協力し、適切な使用を心がけることで、
歯科用レントゲンは効果的かつ安全に使用することができます。
歯科用レントゲンに関する理解を深め、適切な判断を下すことで、
より安心して歯科治療を受けることができます。
医療法人社団AADC
あざみ野青葉デンタルクリニック
歯科医師
鈴木 拓也
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